抗がん剤治療を受ける方へ

  がんの種類や進行度により、使う抗がん剤は違いますし、副作用の発現や感受性は個人差があります。不安は大きいと思いますが、吐き気やしびれといった身体的な副作用はそれを抑える薬が開発され、かなり軽減しています。

  副作用は治療後一度に出るのではなく、症状により発現時期は変わります。個人によっても違いがありますが、初回の治療でご自身の副作用の発現のパターンが分かる方が多いようです。

  治療中ずっと体調が悪いわけではありません。体調が良い時には普段通りの生活が出来る方が多くいらっしゃいます。

  抗がん剤の副作用として脱毛が起こるものがあります。脱毛を防ぐ「頭皮冷却」などの技術も開発されてきましたが、まだ一般的ではありません。

  脱毛は頭髪だけでなく、眉・まつ毛などすべての体毛に及ぶこともあります。髪やヘアスタイルが他人に与える印象は大きく、抗がん剤治療を受けた多くの患者様は身体的な苦痛より脱毛や爪の変色といった外見・ボディイメージの変化を辛いと感じる方が多くいらっしゃいます。

脱毛の経緯

  脱毛は初回治療の10日から2週間後位に抜けはじめ、その後数日で部分的に抜け残る髪もありますがほぼ髪全体が脱毛します。

  治療が終われば、1~3か月位、早ければ1か月待たずに発毛しますので安心してください。発毛も個人差があるので、なかなか発毛しない方、部分的(多くが頭頂部)に生えてこない方も見受けます。また、髪質は変わります。産毛のように腰がなく、クルクルになると言われますが、だんだんと元のご自分の髪質に戻ってきます。

発毛後

  髪が1cm伸びるのに約1か月かかりますから、ウィッグが不要になるのは治療が終了しても約1年位かかります。

  パーマやカラーを掛けるのは、髪の長さが5~6㎝はないと難しいです。髪質だけでなく肌や体質も変わっているので、必ずパッチテストをして、影響がないことを確認してください。

ウィッグはどんな時に必要?

  脱毛期間中に必ずしもウィッグが必要なわけではありません。帽子やスカーフでお洒落を楽しまれる方。脱毛された姿もご自分だと受け入れる方もいらっしゃいます。

  コロナ禍を経て、働き方や生活スタイルも変わりました。ご自身にとって治療中にどういう自分でありたいか。脱毛期間の1年から2年間のご自身のライフスタイル・ライフイベントをよく考えて、お似合いのウィッグを見つけてください。

ライフスタイル

  • お仕事等で人と会う機会が多い方はお相手の方への配慮としてもウィッグを被られる方が多いです。帽子やスカーフでも大丈夫な職場もあります。
    在宅で仕事をされる場合は、オンライン会議の時にはウィッグが必要かもしれません。
  • ご家族が在宅する「お家時間」が長くなりました。ご自宅でも家族の前ではいつもの自分、いつものお母さんでいたい方もいらっしゃいます。
  • ご両親などに心配かけたくない。実家に帰る時、施設や病院を訪問するときにウィッグが必要という方。お孫さんに会う時には元気なおばぁちゃんでいたい。という方もいらっしゃいます。
  • 日常生活はどうでしょうか。ゴミ捨て、買い物、散歩など
  • 趣味の会やボランティア、お子様の学校行事や送迎、地域の活動
  • 何よりも、自分らしくありたい。どんな自分でありたいか。を是非考えてください。

ライフイベント

 ライフイベントもコロナ禍で変わりましたが、人との交流は大事です。Withコロナの時代は感染防止の自衛をしつつ、出会いや交流を楽しみましょう。他人との交流は笑顔の源です。

  • お子さんやお孫さんの卒業式、入学式、結婚式などはありませんか
  • ご親族のご法事などはありませんか
  • 初詣など神社やお寺にお参りに行く。教会のミサに参加する
  • 忘れがちなのは運転免許証やパスポートなど顔写真が必要な証明書などの更新や書き換えはありませんか。帽子でも可能ですが、数年間携える証明書です。

 帽子やスカーフではそぐわない場面もあります。その時に慌てないようにご準備されることをお勧めいたします。

抗がん剤治療とウィッグ・頭皮ケア

治療の決定

  • 脱毛が懸念される治療が決まりましたら、早めにウィッグの下調べをしましょう。
    「どんなウィッグ(素材など)」、「価格」、「どこで購入」、「スタイル(似合うかどうか)と被り心地」を比較検討されるといいです。是非、試着をしてください。
  • お店の場所、雰囲気、サービス、スタッフの対応なども要チェック
  • 自毛のカット
    治療が始まる前にあらかじめご自身の髪を短めにカットすることをお勧めします。
    自毛がロングだと抜けた量があり辛いです。30cmの髪は10cmの3倍です。
    抜けた毛がまだ残っている毛に絡んで、解けなくなることがあります。
    自らスキンヘッドにしてしまう方がいらっしゃいますが、髪は短くても抜けます。短すぎると抜けた毛が洋服や寝具に刺さって、取りにくくチクチクすることもあります。
    今までロングヘアの方はショートにされることに不安や戸惑いもあると思いますが、治療中は軽いウィッグがお勧めです。思い切ってご自毛もウィッグもショートスタイルにされておくと、お手入れも簡単です。
    ショートスタイルに見慣れれば、発毛後に早めにウィッグ卒業が出来ます。
  • 治療前のヘアスタイルにこだわる方、おしゃれを楽しむ方、今までできなかったヘアスタイルに挑戦する方・・・。
    考え方はその方その方ですが、「脱毛を隠す」のではなく、「脱毛中もご自分らしく、過ごせるスタイル、被り心地が良い」ウィッグを見つけてください。
  • 脱毛する前に購入し、被ることをお勧めします。脱毛してもヘアスタイルは変わりませんから、脱毛を気づかれることがありません。人目を気にすることがありません。

治療開始

  • 現在は多くの抗がん剤治療は通院で実施されます。初回の抗がん剤治療で、多くの患者さんが副作用の出現時期や体調が分かるようです。体調が良ければ普段通りの生活が出来る方が多く、仕事を続ける方もいらっしゃいます。
  • 脱毛は抗がん剤にもよりますが、初回治療後10日~2週間位で抜け始め、数日後には一部抜け残ることもありますが、ほぼ頭全体の毛髪が抜けてしまいます。
  • 抜け始めは頭皮がピリピリする。そんな違和感を持たれる方が多いようです。
  • 脱毛し始めたら、就寝時やご自宅では使い捨てキャップなどを使うことで、脱毛した髪の毛の始末が楽になります。粘着性の掃除用具も便利です。
  • 抜け残った毛髪を無理に抜いたり、剃ってしまうことはお勧めしません。頭皮を傷つけてしまいます。

治療中

  • 頭皮は他の皮膚に比べて汗腺、皮脂腺が多く、皮脂は額の倍以上と言われます。毛髪がなくてもシャンプー剤を使ってください。
  • 髪の毛がないとシャンプーの泡が立ちにくいです。100円ショップなどで販売されている泡立てネットをご利用になり、泡でシャンプーされてください。
  • アミノ酸系のシャンプーが良いと言われていますが、高価です。今までご利用のもので大丈夫です。ただし、頭皮もデリケートになり、また匂いに敏感になる方もいらっしゃるので、お使いのシャンプー剤で皮膚が荒れたり、匂いが気になるようでしたら、無香料のシャンプー、アミノ酸系のシャンプーをご利用になるといいでしょう。
    ※アミノ酸系のシャンプーはドラッグストアでも入手できます。成分に「ココイル〇〇、ラウロイル〇〇」と表示されているのが目安になります。
  • リンスは毛髪を整えるためのものですから、脱毛中は必要ありません。リンスやコンディショナーを使うことで、かえって毛穴にリンス剤等が残り、肌荒れの原因になることもあります。
  • 髪の毛がないとタオルドライだけで済ます方が多いと思いますが、毛穴は残っていますので、冷風もしくは微温のドライヤーを掛けることもお勧めします。肌荒れは頭皮がよく乾いていないことでも起こります。
  • 治療中は血行をよくするようなマッサージや育毛剤は避けましょう。
  • 見た目だけでなく、ご自宅にいる時も、帽子やスカーフなどで頭皮を保護されることは必要です。

治療終了

  • 治療が終わったら、積極的にマッサージをして血行を良くしましょう。育毛剤を利用するのもお勧めです。
  • マッサージはシャンプーの時などに、うなじから頭頂部にかけて、揉み上げていくようにしましょう。頭頂部は上半身では一番心臓から遠く、血行が行きわたりにくい場所です。育毛には血行を良くすることが必要です。

発毛

  • 治療が終われば、1~3か月位で髪は生えてきます。最初は産毛のように柔らかく腰がない毛髪で、クルクルとうねっている方が多いです。ずっとくせ毛ではなく、だんだんと元の毛質に戻ります。
  • 発毛には個人差もあります。部分的に髪が生えてこない方も見受けます。脱毛中も頭皮や毛根を清潔に保つことが大切です。
  • 髪の毛が1cm伸びるのに、約1か月かかります。パーマやカラーをするのは5~6cmは必要です。髪の毛も肌も体質も変わっていますので、必ずパッチテストをして、問題ないことを確認してください。
    パーマはかかりづらく、カラーも思っている色に染まらないことが多いので、焦らず、髪の質が元に戻るのを待つ方がいいかもしれません。
  • 白髪隠しや発毛されても特に頭頂部の髪が生えてこない方には部分ウィッグのご使用もお勧めします。

ウィッグ卒業

  • ウィッグを卒業するのは、その方のお気持ち次第です。ベリーショートのヘアスタイルなら治療終了後半年位で5~6㎝には髪が伸びますので、ウィッグをはずせます。
  • ウィッグを外す時は、自毛の生え方もありますので、美容師とよく相談されるといいでしょう。
  • 発毛し始めるとウィッグがきつくなり、収まりが悪くなってきます。
    せっかく生えてきた毛髪ですが、ウィッグの収まりが良いようにカットするのもお勧めします。行きつけの美容院が個室対応できない時には、病院の美理容院をご利用になるのも一つの方法です。
  • 発毛するとウィッグのサイズ調整が必要になります。ご購入された店舗で対応してくれるかどうか。あるいはご自分でサイズ調整が出来るかどうかをご確認ください。
    「Brilliant Breeze」は脱毛時に縫い縮めた糸を解くだけで、サイズは元に戻ります。ヘアスタイルが崩れることもありません。

  発毛されるとご自身の生命力を感じられることでしょう。抗がん剤の副作用もだんだんと緩和されていきます。
  ご自身の髪をいたわり、新しい生活の為にウィッグも活用されてください。

  ウィッグで毎日をより元気に、活き活きとお過ごしください。

8分ピース着用